最終拒絶(ファイナルアクション)を受け取った後、どう対応するか迷われる方も多いと思います。RCEにしても審判(Appeal)にしても、時間面・費用面で高くつきがちで頭が痛いところです。
現在、最終拒絶後の審査を向上させるために、After Final Consideration Pilot 2.0 program(以下、AFCPプログラム)とPre-Appeal Brief Conference Pilot program(以下、Pre-Appealプログラム)とがあります。これらのプログラムに加え、新しいプログラム、Post-Prosecution Pilot (P3) Program(以下、P3プログラム)が開始されました。
P3プログラムは、AFCPプログラムとPre-Appealプログラムとを組み合わせ、さらに新しい特徴を付け加えた内容となっています。具体的に、P3プログラムは以下の内容となっています。
・審査官パネルが最終拒絶への応答を審査(Pre-Appealプログラムの特徴)
・応答には補正案を含めることも可(AFCPプログラムの特徴)
・出願人はパネルに対して口頭で論述(新しい特徴)→後述のP3協議
なお、このP3プログラムによって、AFCPプログラムとPre-Appealプログラムとが中止されるわけではありません。
◆P3プログラムの実施期間
P3プログラムは2016年7月11日に始まり、6ヶ月間経過後または1600件の申請が受理された後のいずれか早い方に終了します。ただし、各技術部門(technology center)が受理する申請は200件までとなっています。そのため、ある技術部門において200件の申請を受理した場合、P3プログラム自体が続いていても、その技術部門では申請を受付けません。
申請受付を終えた後の技術部門に対してP3プログラム申請をすると、P3申請なしの通常の応答書として扱われますので注意が必要です。USPTOのサイト(http://www.uspto.gov/patent/initiatives/post-prosecution-pilot)では、2016年7月22日時点での各技術部門の申請受理状況を紹介しています。
◆参加のための要件
P3プログラムに参加するためには、以下の要件を満たす必要があります。
・最終拒絶を受けた特許出願であること。
・申請対象の最終拒絶に対し、Pre-AppealプログラムまたはAFCPプログラムの申請をしていないこと。
・申請書を、最終拒絶の発送日から2ヶ月以内かつ審判請求前に提出すること。
また、出願人は、P3協議(P3 conference)に参加する旨のステートメント(申請書に含まれています)を出さなければなりません。応答書には、補正書を除き5ページ以下の論述を含めることができます。補正書には、クレームの範囲を広げない補正案を含めることができます。
◆費用
P3プログラムの申請自体は無料です。
◆申請後の流れ
P3プログラムへの参加申請が受理された場合、庁から出願人へ、P3協議のスケジューリングのための連絡が届きます。連絡日から10日以内に協議がスケジューリングされますが、さもなければP3申請は不適切とされる可能性があるようです。
いざ協議の場においては、出願人は審査官パネルに対し、拒絶理由や補正案に関して20分以内の口頭プレゼンテーションを行うことができます。ただし、出願人は審査官パネルに対して質問をすることはできません。審査官側からは質問されることがあります。
P3協議後、出願人は文書にてパネルの決定を通知されます。決定内容には、拒絶理由維持、許可、審査再開、の3種類があります。なお、出願人は決定に対して不服を申し立てられません。拒絶理由維持の決定を受けた場合、出願人は最終拒絶への応答として審判請求またはRCEをする必要があります。応答期限は、決定通知の発送日または最終拒絶に記載された日付(最終拒絶発送日から3ヶ月)のいずれか遅い方までです。応答期限の延長は可能ですが、最終拒絶から6ヶ月までしか延長できない点は通常と変わりません。
審判請求費用(800 USドル)を支払うことなく審査官パネルに審査をしてもらえる点は本プログラムの利点であるように思います。ただ、協議に参加するにあたって現地代理人は準備をする必要がありますので、現地代理人費用が高額になる場合もありそうです。複数ある最終拒絶後プログラムのうちどのプログラムを利用するのか、ケースバイケースで判断していく必要があると思います。
参考:
http://www.uspto.gov/patent/initiatives/post-prosecution-pilot
http://www.uspto.gov/patent/initiatives/post-prosecution-pilot-faqs
https://www.gpo.gov/fdsys/pkg/FR-2016-07-11/pdf/2016-16423.pdf